北見地区吹奏楽連盟が主催するクリニックで初めての試みとして、連盟役員による新任指導者向けの講座が開催されました。2日間のクリニックの中のわずか2時間30分のコマを3人で分担したのですが、僕の受け持ちは「演奏会や大会参加に向けての諸注意」というお題でおよそ15分ぐらい担当しました。


 1.「北見商業高校にみるバンドトレーニング実践例」  講師:河西未来生氏(北見商業高等学校教諭)
     モデルバンド:北見商業高等学校吹奏楽局    
 2.「打楽器のチューニングとデイリートレーニング」  講師:細木雅彦氏(網走市立第二中学校教諭)
  「金管バンド(金管楽器)の指導方法」       モデルバンド:遠軽町立南小学校金管バンド
 3.「演奏会や大会参加に向けての諸注意」 


第14回 オホーツクバンドクリニック:平成22年5月8日(土)〜9日(日)
◆ステップアップ!バンドトレーニング講座(初級編)
平成22年5月8日(土)10:00〜12:30


「演奏会や大会参加に向けての諸注意」


 たくさんの演奏会(コンクール)に参加したり運営に携わったりしてきました。その中で自分が気をつけてきたことやってきたこと、そして感じたことは,たくさんあります。その中のいくつかを紹介します。

保護者(観客)や同僚(家族)への連絡と協力

 子どもたちの活動への保護者や同僚(家族)の理解を増すことは,演奏活動にとても重要なことです。そのために,日常からの細やかで様々な連絡が必要になります。その部分の配慮が欠けると,様々な障害が生じる可能性が高くなります。
 特に,演奏発表の日程等関連事項を保護者・同僚(家族)と児童生徒に出来るだけ細かく連絡することが必要です。この部分をあやふやにしている指導者が多いように思うこともあります。また,泊を伴う遠征の場合は,事前説明会を開催する等,なおいっそう細かな連絡が必要です。 

1 期日
 いつ,どこで,だれが,どんな演奏をするのかを確実に連絡しなければなりません。年度当初には,年間通しての演奏日程計画の提示をしておきます。期日が迫ってきた演奏については,詳しい内容を事前に余裕を持って連絡します。
 日常的な練習日程計画の連絡はもちろんですが,演奏発表に向けた練習日程の連絡も細かくします。そうすることによって,保護者の意識も高まり練習への欠席が少なくなるのではないかと思っています。
 とある中学校吹奏楽部の定期演奏会当日のお昼のことです。その中学のある吹奏楽部員の母親に会ったのですが,
「吹奏楽部で,今日は何かあるのですか?」
ですって・・・・・。おそらく,指導者はプリント等で連絡してあるのでしょうが,この場合は伝わっていなかったのです。特殊な例だとは思います。

2 集合時刻
 いつ,どこに,どうやって集まるのかを連絡します。集合するときの服装・持ち物の連絡もします。泊を伴う遠征時でしたら私服ということもありますが,それ以外はユニフォーム(演奏時の衣装)着用が原則です。また,どのような靴を履いてくるのかも事前連絡そして集合時に確認する必要があります。
 集合時点での確認をうっかりしていると,ステージ上でバラバラの服装や履き物が目に付くことになってしまいます。
 私は,バスに乗って出発する時の集合時刻を出発時刻の数分前を集合時刻にしていました。さすがに遅刻する児童は,ゼロでした。・・・普通は30分前とかに設定するのでしょうね。
 そんな中で,集まったときに必ず実行することは,服装(靴を含む)の確認と健康チェックです。

3 楽器積み込み
 楽器積み込みの時刻も連絡します。大きな楽器をトラック荷台に上げるのも基本的には児童自身が力を合わせて行いますが,保護者にも部分的にお手伝いをいただくと、子どもたちの活動への理解が深まります。
 私は日常的に楽器や練習場所に関わる全ての事柄を児童自身が全てやるようにしていました。大きくて重い楽器の移動は,児童にはとても大変ですが、練習場(3階)から1階の玄関までティンパニやバスドラム,そしてチューバを移動させる時もそれぞれ児童数人が力を合わせるようにしていました。
4 出演時刻
 いつ,どこで演奏するのかを連絡します。観客として保護者に子どもたちの活動を見ていただくことが協力と理解のために必要です。
 フェスティバルやコンクールでは,演奏予想時刻を連絡します。自分の子どもの演奏だけでなく,たくさんの団体を聞いて欲しいのですが,そうなるのには時間がかかります。様々な子どもたちの演奏を面白いと思ってくださって,自分の子どもが出演していなくても観客となってくださる音楽ファンを少しでも増やしていきたいものです。

5 帰宅時刻
 いつ,どこに戻ってきて何時頃に帰宅するのかを確実に連絡します。家を出てから帰宅するまでが演奏活動の一つだという考えが大切だと思います。
 演奏の瞬間だけにしか目が行っていない指導者はたくさんいるようです。そういう指導者の演奏は,貧弱です。児童生徒の様々な能力の総合的な発揮が演奏なのですから,舞台上だけをなんとかしようと思っても,それは無理です。演奏に直接関わらないと思われる事柄もきちんと出来るようになっている子どもが素晴らしい音楽を演奏することが可能になります。その条件の一つとして,きちんと帰宅するということも大切になります。

6 来場者数増加の働きかけ
 子どもたちの活動を見ていただくためにも,入場券購入依頼を積極的に行います。見て聞くことにより理解がなおいっそう深まります。
 札幌でのコンクールに何回か参加しましたが,私は入場券をいつも90枚程販売していました。会場まで5時間以上かかる場所での演奏に部員数の2倍以上の観客を動員したということです。これも最初からたくさんの観客を動員出来ていたわけではありません。日頃の宣伝活動の成果だと思っています。

7 記録(録音・録画・写真)
 業者が記録を取っている場合には,購入希望取りまとめを積極的に行います。これまた,見て聞くことにより理解がなおいっそう深まります。
 扱うのに手間がかかるので面倒な仕事ですが,確実に取り扱います。この部分をきちんとしておかないと,会場内禁止事項を無視してビデオカメラ等を持ち込む父母が出てしまうのではないかと思います。

8 会場への道順案内
 慣れない土地での演奏活動の場合は,会場周辺の地図等を示し道順案内を行います。
 行ってみようかなと保護者に思わせるための材料の一つです。

9 駐車案内
 必要であれば会場周辺の駐車場を案内します。
 北見市民会館のように駐車場がほとんどない会場もありますので,そのような場合には案内が必要です。

10 会場内禁止事項の連絡
びビデオカメラ・カメラ・テープレコーダー等の持ち込みが禁止されている演奏会があるのですが,そうであれば,必ず厳しく連絡します。
 また,演奏中の出入りはしない。飲み物食べ物を会場内で取らない。演奏中におしゃべりや音を立てないことなどの演奏会のマナーを繰り返し連絡します。
 コンクールの運営に関わっていると,この部分を全く連絡していない学校があるのに驚かされます。平然と食べ物や飲み物を取っている観客がいたり,どうどうとビデオカメラで撮影し始めたりする人がいます。

ステージでの見栄え
 演奏が上手な団体は,ステージ上の行動も整然としています。演奏者自身が臨機応変に対応すると,演奏準備もスムーズで,演奏者も観客も演奏そのものに集中することが出来るようになります。

1 ヘアースタイル
 観客の立場になってステージ上を見ると,演奏者のヘアースタイルに目が行ってしまうことがあります。演奏を集中して聞いてもらうために,事前にヘアースタイルについて注意をしておく必要があります。左右それぞれの耳のあたりや頭の上で髪の毛をまとめたりすることのないように,髪の毛をスキッと後ろにまとめさせたりします。顔のラインをスッキリ見せることも必要だと思います。
 ユニフォームを着ているとどれが自分の子どもかを見つけづらいと思っているのでしょうか。中には,突飛なヘアースタイルをしてくる子がいたりしたこともあります。指揮をしながら,その子の髪の毛が揺れるのが気になって気になって・・・集中できませんでした。

2 入場
 スムーズな入場のために,舞台袖での整列の順序を決めておきます。
 単にパートごとに整列するのではなく,それぞれの舞台座席にどういうコースで入場していくのかも考えさせます。

3 椅子の位置・配置
 椅子の向きや間隔・左右のバランス等を児童自身が整え調節するようにしておきます。
 指揮者やスタッフがあれこれいつまでも動き回っているのは,見苦しいものです。演奏への集中力が欠けてしまいます。

4 楽器の準備
 特に打楽器のセッティングには,時間がかかりがちですので児童自身でセッティングを素早く済ませるようにします。私はコンクール入場の時には、中軽量の管楽器プレーヤーが1人2台の楽器を持ち、余った人員が打楽器移動の補助をさせるようにしていました。
 指導者やスタッフがあたふた動き回って準備しているのに,プレーヤーはただただ立っているだけという姿を見ることがあります。子どもが自分でいろいろやるようにするべきです。

5 譜面台
 譜面台の高さと向きを子ども自身が整えるようにします。
 普段使っている譜面台と使い方が違う物の時もあり,調整が難しいこともあるのですが,少なくても譜面台の向きだけは,必要であれば児童自身で整えさせます。

6 椅子の座り方
 日常の練習時に使っている椅子と異なる椅子が用意されていますので,背もたれの使い方や足の位置等,演奏中の姿勢を美しくさせます。
 練習の中で,パイプ椅子を使って座り方の確認をしておく必要があります。ちなみに私は,日常的にパイプ椅子を使った練習をしていました。

7 視線
 演奏中の視線を基本的に指揮者に集めさせます。客席の親をキョロキョロと捜したり手を振ったりしないように注意しておきます。
 私が指導していたバンドで,コンクールの舞台演奏直前に客席の親を見つけて手で合図をした4年生がいました。(軽く手を挙げただけでしたけど)はずかしい・・・。

8 演奏終了時
 椅子から立ち上がるときには,素早く一斉に立つようにします。
 だらだらと立ち上がることの無いように,練習しておく必要があります。

9 指揮者
 指揮者の服装を整えます。指揮中は上着のボタンをとめます。靴下の色,靴の色,靴の種類にも配慮します。
 指揮者の上着のボタンを留めていないと,指揮中に上着の裾がバタバタと音楽の流れに関係なく動きます。とても目障りで音楽の流れを阻害します。

練習・訓練等

1 ステージへの入退場
 コンクールに参加する場合には、体育館等の広い場所で本番と同じような動きで入退場をする練習が必要です。
 ・入場開始から準備が完了するまでの時間を計り、時間短縮の訓練をする。
 ・パーカッション運搬担当を分担する。その時、管楽器プレーヤーからも指名する。
 ・退場開始から完了までの時間を計り、時間短縮の訓練をする。パーカッション運搬担当を明確にする。また、ミュート等小物の忘れ物がおきないようにする。
2 運搬の練習 
 パーカッションの運搬には、特に練習が必要です。たくさんの楽器や小物を効率的に運搬するには、工夫が必要ですし、特にティンパニには、運ぶ時のルールがあります。

3 楽器の積みおろし等
 その場で必要に応じて教えます。身に付けさせていかなければならない楽器の移動に関する様々な事柄がたくさんあります。素早くみんなが協力するという、バンドとしての文化とも言えますが、いつもチェックし続けないと、大きな事故に結びつくこともあります。
 ・練習会場から搬出口(玄関)まで
 ・搬出口からトラックへの積み込み
 ・トラックからの荷下ろし
 ・荷下ろし後の会場への移動
 ・会場内での移動

4 ケース・物品・荷物の保管と整理
 上手なバンドは、様々な荷物等の整理整頓もとても上手です。日常の練習場や楽器保管場所の整理整頓はもちろん、演奏会やコンクール等に参加する時には、限られたスペースや時間で整理整頓を完了させることが必要です。

5 時間を守る
に日常の練習開始を児童生徒に意識させ守らせることは、指導者自身が身を以て示すべき事柄です。特に休日の練習時には、児童生徒の集合時刻以前に練習会場(学校)に到着していなければなりません。
 また、練習終了時刻は、まさに指導者自身の問題です。練習終了時刻として示した時刻は、練習会場(学校)を後にして家路につく時刻だと私は考えます。練習が終わるのを迎えにきた自家用車の中で長い時間待つ保護者のイライラした姿を数多く見てきました。
 
6 ゴミの持ち帰り
 多くの団体が参加する大会等では、会場のゴミ箱を利用せずにゴミは持ち帰らなければならないことが数多くあります。

7 単独行動をしない
 大会等に参加時は、特に慣れない場所でのことが多いので、単独行動をしないということが必要です。また、日常の練習終了後の帰宅時にも、単独行動をしないという習慣が必要です。

8 忘れ物をしない
 演奏会場に到着したのだが、必要な楽器等が見当たらないという経験が私にはあります。児童生徒が気を付けることはもちろん、指導者自ら確認をすることも時には必要です。

9 素早く行動する
 楽器準備・演奏準備・場所移動・帰宅するetc. 様々な全ての場面での素早い行動が出来るようになることが演奏力向上につながります。
当日のあれこれ

1 計画
 ・見通しを持ったタイムスケジュールの策定と決定
 ・児童生徒と関係者への事前連絡と協力体制の確立

2 引率
 ・引率者の決定
 ・児童生徒の心理状態を知ること
 ・児童生徒にまかせること 行動を見守ること
 ・バス・会場での忘れ物の防止・予防
 ・マナー・ルールを守らせる

3 確認
 ・楽器等演奏に使う物品やチューナー等の確認
 ・薬等の確認、体調不良の場合の連絡
 ・児童ユニフォームの確認 靴
 ・遅刻常習者への声かけ
 ・バス酔い対策の再確認

4 健康 
 ・健康状態の確認・報告
 ・バス酔いを防ぐ 薬の服用・新聞紙・袋・バケツの用意 (自分で始末させる)
 ・食中毒の防止 クーラーボックスの用意または、仕出し弁当の手配
 ・水分補給 麦茶・紙コップの用意 *バスへの積み込み 会場控え室への持ち込み

5 マナー・ルール
 ・バス乗車の約束事 
 ・会場での約束事
 ・鑑賞の約束事
 ・演奏終了後の服装(ユニフォームを正しく着用)

6 受け付け
 ・前売り入場券等の精算
 ・舞台配置図の提出
 ・プログラムや出演者リボンの受け取り
7 ウオームアップ
 ・無駄な練習をしない。吹かせ過ぎない。コンディションを整える。
 ・ブレスを深くたくさんとらせる。
 ・指揮者への集中の確認
 ・姿勢の確認

8 演奏
 ・ブレス 
 ・指揮への集中
 ・リラックス
 ・演奏姿勢

9 成績発表・表彰
 ・大会等によって対応が違うので、あらかじめそれぞれ確認・シミュレーションをしておく。

10 楽器
 ・楽器の日常的な整備 突発的な故障への対応

HISASHI HIRAIDE 2010.5.8

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